R is for Rumor

~Rは流言のR~

文学王


ただ単に「作家」と言った場合、著作家、とくに小説家を指す場合が多い。


なぜだろうか。詩人や画家だって作家である。映像作家とか造形作家という呼び方はある。なのに「小説作家」とは決して呼ばれない。そこに僕などは小説家の傲慢さを感じる。「俺様は作家様だぞ、なにか文句があるのか」的なナニカだ。しかも「作家」でも飽き足らない人がいることを我々は忘れてはならない。例えば小説家には「文豪」などという尊称もあるが、これは自分で名乗るとかなり馬鹿みたいということもあるし、そんなとき小説家はついこういうふうに言ってしまうのだ。

やらない、そういうこと、私は。もっと高等な文学者ですから。

石原知事記者会見、平成20年12月12日

文学者」である。ついに学者である。いったい画家が画学者と名乗るだろうか。それでいくと雅楽家なんか雅楽学者になってしまうではないか。「が、がく……がくしゃ」だぞ。「何を震えてるんだみっともない」という話になると思うのだが、それはいいか。とにかく「文学者」だ。小説家にはすさまじい上昇志向があるのだということをまざまざと思い知らされるセリフである。なにしろ政治家になってしまうくらいだしな。心中したり割腹したりするだけが小説家ではないのだ。そこが「文筆を生業とする小説家諸集団」(略して文壇*1)の豊穣さかもしれないが、やっぱり割腹はなあ。

ところでそれほどの上昇志向の持ち主が「学者」ごときで満足しているはずがないと思い至るのは普通だと思う。学者などといってもしょせん実体はただの教師である。そもそも「文学者」だと、どちらかといえば「批評家」に近いアカデミックな研究者と混同して紛らわしい感もあるし、そこで、こうなったら乗りかかった船、もっとよさげな名前を考えてやろうではないかとおせっかいにも思ったりしたのだ。

そうなるとやはり、


「文学大臣」


だろう。なにしろ「末は博士か大臣か」というではないか。つまり「親が子に望む二大職業」である。それでいくと安定性を求めて「文学公務員」というのもひとつの可能性として捨てがたいのだが、これだとやはり少しせせこましい感は否めないし、さらに「文学役人」になるともっとだめだ。どこの検閲者だという感じだ。

話がずれた。とにかく、近ごろ政治家の扱いも非常に軽くはなったとはいえ、やはり大臣は大臣、腐っても大臣である。政治家は落選すればただの人だが、じつは大臣は、ある一定の割合なら国会議員でなくてもなれるので無問題なのだ。「文学大臣」にはなかなか偉そうな響きがあるし、今はなき「文部大臣」にも似てるのでオススメ☆ 早い者勝ち★*2

しかしもちろん大臣には「上」がいるわけで、誰かが文学大臣を名乗り出したら、
 
 
 
文学王
 
 
 
という呼称が出てくるのもまた必然であろう。「王」である。「文学王に、俺はなる!」というわけである。ONE PIECEのことはよく知らないのであまり具体的なことを書けないのが残念だ。ついでにいうと王を統べるものという意味で「文学皇帝」というのもありかもしれない。そしてこうなるともっと偉そうな呼び方が欲しくなるのが人の常である。だからきっとこう名乗るものが出てくる。
 
 
 
 
 
 
「文学神」
 
 
 
 
 
 
たちまち2ちゃん語になってしまったようにも思えるが気にしてはいけません。そこからおそらくさらに上位の概念である文学界王」「文学界王神」などと続くのであろうが、もうどうでもよくなってきたのでここで一方的に終わろうと思う。DRAGONBALL改も見てないし。

大宅壮一だったかが、「個人主義文化の純粋な体現である小説は、個人主義文化の最高潮であった十九世紀をもってすでに終わった」とどこかに書いていた、という話をどこかで読んだ、ような気がするのだが、であれば二十一世紀を生きる若者はもっと別の新しい道を探さねばならないわけである。文学にかまけている暇などないのだ。

*1:略してない略してない

*2:誰に媚びているのだ?